シンイチ、マユミと名乗る日本人が爆破事件に関与しているのか… 二人の行方を追う砂川(高嶋政伸)と塩原(伊藤淳史)(左から)伊藤淳史、高嶋政伸
1987(昭和62)年11月29日、大韓航空機が爆破され115名の命が犠牲になった。逃亡寸前に捕らえられた実行犯は、「蜂谷真由美」と名乗る北朝鮮の20代の若き女工作員だった。その名は金賢姫(キム・ヒョンヒ)。当時、まだ厚いベールに包まれていた北朝鮮という国への恐怖と共に、人々の関心は、金賢姫に向けられていた。拘束された金賢姫が捜査員に両腕をつかまれ、猿ぐつわをされた異様な姿でタラップを降りる姿は多くの人の脳裏に焼き付いていることだろう。しかし、女を追い詰め逃亡を阻止したのが、実は3人の日本人大使館員だったことを知るものは少ない。しかも彼らは、いずれもいわゆるキャリア外交官ではなく、ノンキャリアの若手大使館員や、他省庁や民間からの出向者だった。 そしてまた、この事件をきっかけに金賢姫が日本人になりすますための教育をさせられた「日本人拉致被害者」の存在が明らかになった。
事件から20年――。フジテレビでは、大韓航空機が爆破されてから金賢姫の身柄拘束までの3日間の知られざる男たちの闘いを、彼らをはじめとする関係者の証言をもとにドラマとドキュメンタリーで描く。
二度とあってはならない残酷な事件の実情、そして、日本の危機を救った3人の日本人の闘いを伝えることで、この事件は過去のものではなく、いまだ解決を見ない“拉致問題”へつながっているということを一人でも多くの方に伝えていきたい。
プロデューサー・成田一樹(フジテレビ報道番組部)
今年は、大韓航空機爆破事件から20年を迎えます。その実行犯である北朝鮮工作員・金賢姫を追い詰めたのが、3人の日本人大使館員だったことを知り、この事実をぜひ伝えたいと思い、番組化を進めてきました。なにより、その大使館員の方々がいずれも、いわゆるキャリア外交官ではないということ。上司から命令を受けたわけではなく、『自分の力でこの国を守るんだ』という正義感で、北朝鮮の工作員を追い詰めていった、その無垢な行動力に胸を打たれました。この3人がいなければ、日本の外交にとってとんでもない危機が訪れていたかもしれません。そして、拉致問題に世間の注目が集まることも遅れていたかもしれません。我々が、お話を伺わなければ、3人の方々はこの事実を胸に秘めたまま生きてこられたのではないかと思います。その点で、番組に課せられた責任は重いのですが、高嶋政伸さん、伊藤淳史さん、勝村政信さんの3人の俳優陣に演じていただくことで、事件を知っている方々はもちろん、事件を知らない若い世代の方々にも、日本の危機を救った3人の日本人の戦いを知ってもらいたいと思っています。
また、今年は、横田めぐみさんが拉致されて、この11月で30年という節目の年であります。拉致問題の一日も早い解決を目指すうえでも、この事件で明らかになった工作員の実態を伝えていきたいと思っています。
◇ 事件は――
1987年12月15日、韓国政府に身柄を引き渡された北朝鮮工作員・金賢姫の異様な姿に日本中の関心は集まった。(当時のニュース映像より)
1987(昭和62)年11月29日、韓国の民間機に時限爆弾を仕掛け、飛行中に爆破させるという許されざるテロ行為の罪を、北朝鮮は日本人になすりつけようとしていた。金賢姫は、「シンイチ」と名乗るもう一人の工作員・金勝一と共に偽造パスポートを使い、大韓航空機にイラク・バグダッド空港から搭乗。機内に手荷物として持ち込んだ爆弾を9時間後にセットし、経由地であるアラブ首長国連邦・アブダビ空港で降りた。その後大韓航空機は、乗客乗員115人を乗せてアブダビを飛び立ち、次の経由地であるタイのバンコクへ向かう途中、突然消息を断ち墜落した。
かたやテロの任務を遂行した二人は、そのままローマ行きの便に乗り、そこから北朝鮮へ戻って姿をくらますという次の任務に取りかかっていた。この任務もほぼ成功するはずだった。しかし、中東を出国する直前、3人の日本人大使館員の働きによって計画は瀬戸際で阻止され、二人の身柄は確保された。自らの身元を隠蔽(いんぺい)するために、彼らは監視の目を盗みタバコに隠されたアンプルを噛(か)み砕き服毒自殺を計った。結果、シンイチは死亡し、マユミは一命を取り留めた。事件から約1ヵ月後、生き残った女の真の正体が明らかにされた。
金賢姫(キム・ヒョンヒ)――、これが女の本当の名前だった。
1988年1月15日に開かれた会見で金賢姫はこう語った。
「私は、北朝鮮の特殊工作員で、ソウルオリンピックを妨害するために大韓航空機を爆破しました」
そしてまた、金賢姫の供述によって、北朝鮮の驚くべき国家的犯罪が初めて公になった。金賢姫を日本人に見せかけるための教育をさせられた「日本人拉致被害者」の存在がようやく明るみになったのだ。あの横田めぐみさんが拉致されてからも既に、10年もの歳月を経てようやく。もし、この事件で金賢姫の身柄を確保できなかったとしたら、拉致問題の進展はもっと遅れていたのではないかと言われている。
◇ 番組は――
大韓航空機に時限爆弾をセットしアブダビ空港で飛行機を降りた金勝一と金賢姫はローマへ逃亡するはずだったが…。(左から)中丸新将、美元
大韓航空機爆破事件、そして、金賢姫身柄拘束の舞台裏の知られざるもう一つの真実をドラマとドキュメンタリーで描く。
当初、大韓航空機には日本人乗客はいないとされていたにも関わらず、アラブ首長国連邦の日本国大使館員・矢原純一が「マユミ」と「シンイチ」という名前を発見した。そして、その情報をもとに、二人を出国直前で食い止めたのが、バーレーンの日本国大使館の外交官・砂川昌順と塩原順である。もし、この3人がいなければ金賢姫の存在が明らかにされることはなかったかもしれない。これまで、彼らが果たした役割は、事件の核心を知るごくわずかの人間のみが知る極秘事項として、深く歴史の闇に封印されてきたが、20年を経てついにその男たちが重い口を開き始めた。
日本人乗客はいないとされていたがマユミとシンイチという名前を発見したアラブ首長国連邦日本国大使館員・矢原純一(勝村政信)
ドラマ部分では、砂川、塩原、矢原の3人のノンキャリアの外交官が、「日本を守る」という正義感からたった3日間という短い時間の中で金賢姫を追い詰めていく過程と、緊迫した中で正義感と組織の間で揺れるそれぞれの思いを、高嶋政伸、伊藤淳史、勝村政信といった演技派の俳優陣が演じる。
ドキュメンタリー部分では、砂川氏、矢原氏のインタビューをはじめ事件を知る関係者の証言をもとに、ニュース映像を織り交ぜ当時をふり返りながら真相に迫る。
ノンフィクションドラマ12月15日(土)21時〜23時10分放送の
土曜プレミアム特別企画『大韓航空機爆破事件から20年 金賢姫を捕らえた男たち 〜封印された3日間〜』、どうぞご期待ください。
今年は、大韓航空機爆破事件から20年を迎えます。その実行犯である北朝鮮工作員・金賢姫を追い詰めたのが、3人の日本人大使館員だったことを知り、この事実をぜひ伝えたいと思い、番組化を進めてきました。なにより、その大使館員の方々がいずれも、いわゆるキャリア外交官ではないということ。上司から命令を受けたわけではなく、『自分の力でこの国を守るんだ』という正義感で、北朝鮮の工作員を追い詰めていった、その無垢な行動力に胸を打たれました。この3人がいなければ、日本の外交にとってとんでもない危機が訪れていたかもしれません。そして、拉致問題に世間の注目が集まることも遅れていたかもしれません。我々が、お話を伺わなければ、3人の方々はこの事実を胸に秘めたまま生きてこられたのではないかと思います。その点で、番組に課せられた責任は重いのですが、高嶋政伸さん、伊藤淳史さん、勝村政信さんの3人の俳優陣に演じていただくことで、事件を知っている方々はもちろん、事件を知らない若い世代の方々にも、日本の危機を救った3人の日本人の戦いを知ってもらいたいと思っています。
また、今年は、横田めぐみさんが拉致されて、この11月で30年という節目の年であります。拉致問題の一日も早い解決を目指すうえでも、この事件で明らかになった工作員の実態を伝えていきたいと思っています。