あらすじ
奇跡の動物園2010 北海道旭川市にある最北の動物園、旭山動物園。新しい展示施設「オオカミの森」も評判をよび、連日大勢の来園者の歓声が響きわたっていた。
 ある日、坂内(山口智充)は、世界遺産に指定された貴重な動植物の宝庫である知床に来ていた。雄大な自然の風景に、しばし言葉を失う坂内。そこへ銃声とともに「あぶない!」との声がかかる。知床では植生を回復するため、奇跡の動物園2010増えすぎた野生のエゾジカを銃で駆除する試みがなされていたのだ。よく見ると、金網をめぐらせたイチイの木の網目のすき間から樹皮が巧みにかじり取られている。「シカの食害です。金網で守ってもこのありさまで、エゾキスゲやエゾノシシドウの群落までがそのために姿を消しているんですよ」との説明に納得する坂内だが、弾がそれ、シカに命中しないとどこかほっとするのも事実だった。そんな坂内の様子に、猟師は「生きるために必死で食べているだけのシカを撃つのはかわいそうな気もする。けれど、これだけは確実に言える。この森は、いつか消えてしまう。私たちがこのまま何もしなければ確実に」という言葉に坂内は「…僕たちにできることって何なんでしょうね」とポツリとつぶやく。自らに問いかけるように―。そして、次の大型展示は、エゾジカでいこうとひそかに心に決める。

奇跡の動物園2010 そんな折、旭山動物園に本州からアミメキリンがやってくることになり、佐和子(戸田恵梨香)はじめ飼育係たちは到着を待ちわびていた。二泊三日の旅を経て、コンテナを運転してきたのは動物専門業者の茅野。そして、なぜか娘の瑛里(水沢エレナ)も助手席に同乗していた。瑛里は矢部(利重剛)のめいだが、派手な装い、濃い目の化粧、人と会話もせずに携帯電話をもてあそび続けており、動物にも旭山にも全く無関心な様子。そんな娘を茅野は、キリンとともに旭山に託し、帰途についてしまう。
 同じころ、「あざらし館」の責任者に任命された中川(小出恵介)は人気施設にさらなる展示の工夫をしようと張り切っていた。そして、水辺でえさをやっている時、アザラシがジャンプしてそのえさに食いつくのを見た中川は、もっとえさを高く掲げてみると、さらに高いジャンプをすることに感動し、「あざらしのジャンプ」と題した新しい展示方法を考えつく。空中につられたえさをめがけて高いジャンプを見せるアザラシに観客たちは大喜び。連日大好評を博すが、「アザラシって自然ではジャンプしてエサ食べるんだ」「すごいね〜」という親子連れの無邪気な会話を耳にした坂内は、心のうちにひっかかりを覚えはじめる。奇跡の動物園2010そして、そのあざらしジャンプが好評につき午前午後の二回行われることが決まった時、キリン担当の佐々木(荒川良々)がポツリとつぶやく。「でもあれって微妙なとこあるよな」と。そこへ坂内の一言が響く。「本当にいいのかな」。思わず坂内の方へ向き直る一同。「俺も同じことを考えてた。あのジャンプは、本当にアザラシの行動をお客さんに見てもらってると言えるんだろうか、と。野生ではアザラシが水中からジャンプして魚をキャッチすることはないだろう? それを考えたら、どうしてもショーのように見えてしまう」。その言葉に中川は激高する。議論は白熱するが、なかなか答えはまとまらない。最後に坂内は「アザラシのジャンプは中止すべきと思う」と結論を下す。「野生にない行動でお客さんに人気が出ても意味がない」と理由を説明する坂内に、納得できない中川は食って掛かる。「野生、野生ってえらそうに言うけど、何なんですか野生って。俺ら誰一人、野生の中でなんて暮らしてない。坂内さんだってそうでしょ、南極行ったことあるんですか、ジャングル見たことあるんですか、本物の野生なんて知らないでしょ!」そしてさらにとどめをさす。「それで野生ではこうだなんて言われても納得できませんよ!」。その一言に衝撃を受ける坂内。たしかに、自分は、知識の上での野生しか知らない、ここにいる動物たちが生きている場所に行ったことすらない、と。なんとなく気まずい坂内と中川。そんな2人を、園長の小野(津川雅彦)牧原(伊東四朗)は心なしか心配そうに見守る。

奇跡の動物園2010 数日後、坂内は市議会に来ていた。エゾジカの新施設の構想を、議員たちに説明し、費用を捻出してもらうためだ。議員の中には「北海道の森を食いつくす問題のある動物であり、害獣であるエゾジカを良く見せる施設を作っていいのか」と反対意見をだす者もいた。さらには「そもそも、新しい施設って必要なの?」との意見も。議論は紛糾するが、坂内は「いま地球規模での環境破壊が進んでいます。自然の秩序を壊してしまったのは人間ですがそれを取り戻す行動が取れるのも人間だけ。それを、この新施設“エゾジカの森”で伝えていきたいんです。どうか、予算を出して下さい」と熱弁をふるい、深々と頭を下げる。そんな坂内を渋い表情で見つめる商工会の新田は、「地球を守ろうとか森を守ろうとか、言ってることが正しいのは分かる。でも、でっかい話すぎて、遠いんだよな」と言う。「こんな時代だから、みんな自分が生きるのに必死だからさ」との新田の言葉は妙に説得力があり、坂内は今自分がなすべきことは何なのか、考え込んでしまう。「自分がこだわっていることって本当に意味があるんだろうか?」そう思い悩む坂内に、牧原は言う。「ごちゃごちゃ言っているヒマがあったら、ジャングルでも何でも行って見てくりゃいいじゃないか」。その言葉に背中を押された気がした坂内は、休暇を申請するため園長の小野の所に行く。実は、マレーシアのボルネオで獣医をしている友人・長谷川勝人(吉田栄作)から坂内にボルネオに赴任してこないかという内容の葉書が来ていたのだった。ボルネオと聞いた園長は「中川も一緒に連れて行き、2人でじっくり話してこい」との条件つきで休暇願いを受理する。
奇跡の動物園2010奇跡の動物園2010奇跡の動物園2010 中川とともにボルネオに旅立った坂内は、さっそくオランウータンリハビリセンターで働く長谷川を訪ねる。
 坂内と中川は長谷川とともに熱帯雨林の川の中を疾走するボートに乗り込む。圧倒的な自然の力強さ、ダイナミックさに興奮し、いつしか笑顔になる2人。そんな2人を長谷川は一面ヤシの木が広がる広大なプランテーションへと案内し「アブラヤシの農園を作るために次々と森が伐採されて行き、野生動物たちはすみかを奪われ追いやられた。昔はあたり一面、熱帯雨林で深い森だったんだ」と過酷な現実を話して聞かせる。驚く2人に長谷川はさらに「人間の都合で、川の両側や小さくいくつもに別れてしまった森と森をつないで、動物たちが自由に移動できる道を復活させたい」と自身の夢を語り、坂内に「動物園で野生にこだわってきたお前自身を試すチャンスだ、お前の力を借りたい。どうだ、こっちに来ないか」と真剣な目で誘いをかける。そんな長谷川の言葉に坂内は「ここに来たおかげで、俺のやるべきことがはっきり分かった。早く旭山に帰り、ここで見たものを早くお客さんに伝えたい」と決心を伝えるのだった。奇跡の動物園2010奇跡の動物園2010中川も、ボルネオの大自然や本物の野生に感動しながらも早く動物園に帰って仕事をしたいと願っている自分に気づき、笑みを浮かべる。

 旭山での瑛里は相変わらず誰とも心を開かない日々が続いていた。優しく話しかける佐和子に対しても「うざいよ」と冷たい言葉を投げつけるだけ。一方、「あざらし館」担当の中川は、アザラシの新たな展示方法を思いつく。毎年流氷に乗って北海道に来るアザラシの生態を、凍らせたプールで表現しようというのだ。「このまま温暖化が進んで流氷がなくなったら、アザラシはどうなってしまうのか。そんなことも考えてもらいたい」との思いも込められていた。坂内も「面白いな!」と大賛成。しかし、プールを凍らせることは至難の業だ。2人の挑戦の日々が始まり、飼育員たちも総出で手伝った結果、見事に成功したかに思えたが、ある致命的な欠点が発覚し、一同はがっくりと肩を落とす。そこへ瑛里がやってきて−。