
「まる17年になりますね」
ケニア出身とは思えないしっかりとした日本語で、しみじみと語ったのは、
第1回の東京マラソンを制した、ダニエル・ジェンガ選手。
初めて来日してから、もう17年。
今32歳なので、人生の半分以上を日本ですごしていることになります。
もう、心は日本人。
本人も外国人選手と見られることを嫌がるようなところもあります。
そんなジェンガ選手のことを、ヤクルト陸上部の奥山監督は、
「外国人らしくない、義理と人情の人」
と表現してくれました。
2年前、東京マラソンでゴールした直後の、優勝選手インタビュー。
当時指導を受けていた安田監督の名前を口に出した瞬間、
ジェンガ選手は、涙をこらえきれなくなりました。
ずっと、そばで見ていてくれたことへの感謝の気持ち。
レース中に、監督の声が聞こえてがんばれたと語りました。
その後、安田監督は定年退職で陸上部を離れ、
現在の奥山監督がそのあとを継いだのですが、
ジェンガ選手は、今でも感謝の気持ちを忘れないでいます。
「10年間、一緒にやってきましたので、たくさん思い出がありました。
マラソンを走れたのは、安田監督のおかげだと思います。
今でも、練習しているときも試合で走っているときも、
いつも安田監督のことを思い出しています。大切な監督でした。」
そしてもう一人、ジェンガ選手が大切にしている人がいます。
それは、ケニアで生活している2歳の娘・トレイシーちゃん。
「かわいい盛りですね?」と聞くと、
「まあ、自分の娘ですからね」
とやさしい笑顔を見せてくれました。
しかし、トレイシーちゃんは、奥様のモニカさんと一緒にケニアで生活しているため、
普段はなかなか会うことができません。
最近、自分で電話をとれるようになったそうで、たまに話はしているものの、
先日、ケニアから日本へ戻る際には、「パパ」ではなく、
「おじさん、また帰ってきてね」と言われてしまったそうです。
日本が暖かくなる5月には来日するそうで、そのときに
「いい報告ができるように頑張りたい」
とジェンガ選手は意気込んでいます。
ジェンガ選手は、東京マラソンに向けて、
2ヶ月ほどケニアで練習をつんできました。
これだけ長い期間ケニアに滞在するのは、10年以上ぶりのこと。
しかも、現地では北京五輪金メダリストで、
ケニアの後輩でもあるサムエル・ワンジル選手らと一緒に走っていたといいます。
もう一度、優勝したい。
復権を期す初代王者の思いは、
義理と人情で支えられ、どんどん強くなっています。

